19都道府から集結 ”別府ワーケーションWEEKまとめ”

2024年1月14日~20日にかけて、別府初のワーケーションWEEKを開催しました。
多種多様な業種、地域から33名が訪れ、”観光だけじゃない別府”を体感、ライフスタイル拠点の1つとして選んでもらうきっかけとするため、別府ワーケーションを実践してもらいました。
今回一般社団法人日本ワーケーション協会に運営協力いただき、代表理事である入江 真太郎さんに、プロの視点からみた当日の様子、別府ワーケーションの特徴を記事にしていただきました。

別府市内では、2024年1月14日〜20日にかけて、別府ワーケーションWEEKが開催された。それに関しての所感を綴っていく。

まず今回の別府ワーケーションWEEKの特徴を下記に記す。

  • 全てのプログラムの参加を強制せず選択制にしている。
  • どのタイミングに参加するかは、参加者の自由で決められる。
  • メインはワーケーションMeetingのVol.1とVol.2のセッション。
  • 日帰りでの参加も可能なので、別府市内からも参加ができる。
  • 日曜日開始にしたのは、会社員の方が有休を取らずに移動することを考慮して設定。また月曜日を終日フリータイムにしているのも、会社員の方が会議が特に入りやすい日にちとあって、仕事の予定を組やすくするために配慮した。
  • 大まかなエリアは前半を鉄輪(かんなわ)温泉、後半を北浜と分けた。

今まで、別府市は法人の団体を対象とした取り組みを多くやってきたが、今回は会社員の個人も含む、個々のライフスタイルや働き方に着目した設定となった。

多彩な層が参加したイベント

今回の特筆すべき部分というと、このワーケーションWEEKの期間中にイベントを1回以上参加された方、申込者がなんと19都府県から集まり、総勢33名となった。

ワーケーションと聞くと、どうしても都会→地方で語られがちだが、居住地に関係なく全てのライフスタイルや働き方にスポットライトを当てることでここまで幅広い層の参加者を別府にお越しいただくことができることが鮮明になった。

19都府県の内訳は、茨城・栃木・東京・神奈川・長野・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・香川・愛媛・広島・福岡・大分・熊本・宮崎・鹿児島・沖縄。ワーケーションイベントではよく東京都内の方だけが集まってしまったりなどになりがちであるが、別府でのイベントは多種多様な地域から集結したのが1つの特徴と言える。

また、参加者も、会社の経営者、フリーランス、会社員個人、自治体職員と幅広い層となった。参加者の像を指定しないことにより、ワーケーションに慣れている感度の高い方が多かったのが特徴だ。

さらに、初めてのワーケーションの層も20%ほどおり、別府市内でもこうした方と触れ合いたいと参加された民間の方がいらっしゃった。別府ワーケーションWEEKは、様々な人たちが別府という地域で交わり合った、素晴らしいイベントだったと言える。

温泉の入り方を伝授する

初日の最初のプログラムは、温泉ソムリエによる温泉入浴講座。別府八湯温泉道名人会から、長谷部さん、八木さんから入浴の仕方を学ぶ。特に別府は熱い湯が多いことで有名だが、正しい入り方を教わることで、別府の温泉の入り方をマスターすることができる。別府は湧泉量源泉数ともに日本一。その街に根付いたライフスタイルが、まさに温泉と言える。

また別府には、公衆浴場が非常に多く、有名温泉地ともライフスタイルが大きく異なるのも特徴だ。これらを覚えていくことで、公衆浴場にどんどん入れるようになり、別府の暮らしそのものを体感できるようになる。それは同時に仕事での疲れを癒す時間となり、別府ならではのワーケーションのスタイルにも直結した。

今回、初日の参加者は少なかったものの、講座参加者からどんどん入浴作法が他のワーケーションWEEK参加者へ伝わっていったので、多くの参加者は入り方の極意をマスターすることができた。

その後はウェルカムパーティーが実施され、この時点でかなり多くの地域からの参加者が集うものとなった。

多様な働き方・暮らし方・旅のスタイルを別府で探る

今回のワーケーションWEEKの目玉は2回あるワーケーションMeeting。1回目は、鉄輪温泉エリアで「多様な働き方・暮らし方・旅のスタイルを別府で探る」がテーマ。まさに、ワーケーションというライフスタイル、移住というフィールドを変えたライフスタイルが、どのように自身に影響を与えたのかを考える時間となった。

ワーケーションというライフスタイルを送る代表として、多拠点居住サービスADDressのコミュニティマネージャーも務めている武市栞奈さんと、旅好きフリーランスコミュニティ@worldの代表の花田和奈さん。通常、こういうワーカーは東京のワーカーが登壇するケースが目立つが、今回は愛媛県と滋賀県からの登壇。アフターコロナにおいて、実は地方都市在住のワーケーションを行う方が増えていることを踏まえて選定した。

2人とも、自身は自分の地域(愛媛・滋賀)への良さを伝えながらも、ワーケーションに関するコミュニティのメンバーと関わっていることで、様々なワーカーと触れ合ってきているので、非常に話が豊富だ。徹底的な現場の声がこの日は多く聞かれた。

そして別府へ移住して地域の取り組みに溶け込んだ、湯治ぐらし株式会社代表取締役菅野静さん、Glide Japan株式会社代表取締役井手正広さん、NPO法人別府八湯温泉道名人会理事長などを地元で務める別府の一休さんこと花田潤也さん。

菅野さんは別府の鉄輪温泉に惹かれて現在はシェアハウスの事業などに取り組み、井手さんはコミュニティスペースの運営などで海外からの九州ファンを増やす事業を行なっている。花田さんは愛されるキャラクターを生かして、別府の街歩きなどのコーディネーターを務めるなど、別府の町に欠かせない存在だ。

1つここで感じたことは、別府には温泉が他の観光地と違い生活に根付いている。まさにライフスタイル、日常。そこが好きになってワーケーションでのファンが増えたり、そのまま移住してしまった例も多数存在しているのは、まさに多くの自治体が求めている関係人口などの取り組みそのものであるということだ。

このMeetingで驚くことは、茨城・栃木・沖縄などの遠方からワーケーションで訪れた方から、別府市内在住の方まで幅広く参加していたことである。地元の方がしっかりと知りたいと思って参加していることが、非常に大きいと感じている。

合間の街歩きやコワーキングでの仕事、そして日常

別府ワーケーションWEEKでは、全体的にゆとりあるスケジュールだった。その中で好評のまま進んだのが、別府の一休さんこと花田潤也さんの街歩きツアーだ。

花田さんの街歩きは、今回は1時間ほどとなったが北浜エリアの細かいうんちくも交えながら、何故別府がこのような街になっているのかが知れる非常に興味深いツアーだ。さらに、花田さん自身が別府で顔が広いこともあり、おすすめの飲食店を教わることもできる。

ワーケーション滞在中に街歩きは非常に人気があり、これはバスで行く観光だと荷が重いが、街歩きであれば気楽に参加できて街を堪能できるというのが大きい。ワーケーションのコンテンツにはこの「気軽さ」が非常に重要なポイントとなる。気軽なのにユーモア溢れるのが花田さんの街歩きの非常に面白いポイントであった。

別府市内にはワークスペースが様々ある。いくつか体感をさせて頂いたが、そのうちの1つが鉄輪温泉エリアに位置するa side-満寿屋-だ。ここにはADDress別府A邸でも家守を務めている星悠さんが、コミュニティマネージャーを務めており、別府や鉄輪温泉エリアでのネットワークの中心となっている。

すじ湯温泉までは徒歩6秒というのが別府らしい魅力も誇っており、ワーケーションWEEK中には多くの参加者が訪れ、利用した。まさに別府のネットワークの中心と言える。

その他では北浜エリアにコワーキングスペースLinkがある。ここはどちらかというと都市型のワークスペースで、かなりワークプレイスとしては機能的な場所と言える。別府市内に滞在中でも、特に集中して仕事を行いたい時などに非常に有効な場所と言える。

また、カフェ型のワークスペースが多く位置しており、詳しくはBEPPU YUKEMURI WORKATIONのページを参照頂きたい。

別府は夜の街も様々なコンテンツが揃っており、参加者は毎日夜の街に繰り出して、別府の町を楽しんでいた。

別府で自治体とワーカーの交わり方を探る

もう1つの目玉となった別府ワーケーションMeetingの2回目。テーマは「自治体とワーカーの交わり方を探る」というテーマ。

今回のテーマにあたり、温泉ソムリエの資格も取り、別府と共に会社ミッションにも挑んだ、株式会社BIGLOBEの芳賀康平さんにお話を頂いた。

芳賀さんは、ご自身の体験から、温泉入浴を仕事に活かし、攻めの温泉活用を思いつき、「温泉ワーケーションは仕事に有効だ」という免罪符を盾に、別府市と共に様々な取り組みを行った。例えば、下記にあるような鉄輪温泉・北浜温泉・明礬温泉などでワーケーション前後の心身の変化を計測するなどした。

鉄輪(かんなわ)で味わう“現代版湯治(とうじ)”の効果とは [心と身体、働き方が変わる別府ワーケーション]
北浜で見つけた気づきとは [心と身体、働き方が変わる別府ワーケーション]
明礬(みょうばん)でほぐした“心身のコリ”とは [心と身体、働き方が変わる別府ワーケーション]

さらに芳賀さんは活動を通して、別府とのつながりが深くなり、シェアハウス湯治ぐらしに 「BIGLOBEワーケーションスペース」を開設した他、個人ですじ湯温泉のサポーター会員になるなど、まさに別府市の自治体と双方でやっていきたいことを実現させていったのである。

その後、長野県立科町役場から企画課の上前知洋さん、福岡市役所から経済観光文化局観光コンベンション部観光産業課の横山裕一さん。宮崎県日向市役所から商工港湾課の新玉祐史さんが、それぞれの自治体の取り組みをプレゼンしあった。

立科町は、立科WORK TRIPを軸に、法人の主に開発合宿を受け入れ。その先に地域の社会福祉のためにテレワークで暮らせるまちづくりを目指している。福岡市は、都市規模の大きさを活かし、個人から法人、国内から海外までの幅広い受け入れを進めており、最近では海外からのデジタルノマドの受け入れを日本の筆頭自治体として取り組んでいる。日向市では、地域のローカルな繋がりを武器に、法人のワーケーションの受け入れを民間事業者に徐々に自走化を目指して落とし込んでおり、日本有数の先進地となった。

その後のトークセッションでは、自治体とワーカーが繋がるためにやっていいことやいけないことなどを議論。例えば声として自治体側から出たのは「明らかに自社の利益しか考えていない提案」や「自治体のスケジュールを無視した提案」などは対応が難しいとの声があがった。民間企業と自治体やどうしても決裁の速度は大きく異なる。それらを踏まえて共創していくことが非常に重要であることを改めて感じさせられた。

幅広い参加層を受け入れられたのは別府だから

日本の多くの自治体は未だに「〇〇な人のみ対象」など、何故か対象を絞る傾向にある。しかしながら、ワーケーションの実施率は4〜6%、人口推計でも400〜500万人ほどだ。その中に隠れワーケーターと呼ばれる会社に言わずにワーケーションを行っているそうがいるとすると、まだまだ濃いファンの中で行っているマーケットだ。

つまり「ライフスタイル」「働き方」で対象を絞るべきであり「居住地」「会社規模」などで対象を絞るべきでない。別府市はそれらを理解した上で、地元に根付く温泉入浴の「ライフスタイル」の馴染みやすさなどが、結局つながり、今回の参加層の幅広さなどに結び付いた。

別府のワーケーションはこれから、個人は幅広く気に入った方が来る地域になるだろう。そして法人は温泉の効果がはっきりと理解できる企業を中心に訪れるようになるだろう。まさに、”観光だけじゃない別府”を味わうことで、ならではの暮らしができ、自然と別府と繋がり、街と関係を持つ人物になっていく。

入江 真太郎 
一般社団法人日本ワーケーション協会代表理事

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