明礬(みょうばん)でほぐした“心身のコリ”とは [心と身体、働き方が変わる別府ワーケーション]

  

オフィスだけでなく自宅でも仕事ができるようになった昨今、仕事と休暇を両立させた“ワーケーション”が注目を集めています。

和歌山県や北海道などが有名ですが、大分県別府市でもワーケーションの受け入れに積極的に取り組んでいます。

今回、同じくワーケーションの取り組みに積極的なビッグローブ株式会社と「福利厚生型ワーケーション」の実証事業が、別府市内3つのエリア(北浜・鉄輪・明礬)で実施されました。実施するにあたり、単にワーケーションを体験するだけでなく、参加者の日々の健康状態を計測し、どのような変化があったのかを可視化した点が大きな特徴です。

古くから温泉郷としてのイメージがある別府ですが、ワーケーションの場としての別府にはどういった魅力があるのでしょうか。

第3弾 Healthcare Workation Stay(明礬)

北浜、鉄輪に続く第3弾は、明礬がワーケーションの舞台となりました。

2022年1月11日(火)〜14日(金)の4日間にわたって、‟非日常空間”で行う通常業務とヘルスケアをかけあわせたワーケションプログラム。参加者たちはどのような時間を過ごしたのでしょうか。

まずは、4日間のプログラム内容を紹介します。

3泊4日のプログラム

明礬ワーケーションの特徴は、規則正しいタイムスケジュールの中で通常業務を行う時間を確保しつつ、ヘルスケアにつながるプログラムが組み込まれていることです。

【1日目】長旅の疲れを明礬の硫黄泉が癒す

オリエンテーション

参加者たちは明礬エリアの滞在先となる「杜の湯リゾート」でチェックインを済ませ、同館に用意された部屋でオリエンテーションが実施されました。

主催者である(一社)B-biz LINKから、「北浜」と「鉄輪」で行なったワーケーションについてのお話と、今回のワーケーションの舞台となる明礬エリアの特徴の説明がありました。

ここ明礬エリアは至る所で湯けむりが立ち昇り、別府市内でも特に静かな温泉街。藁葺きの湯の花小屋が点在しており、国の重要文化的景観に指定されるほど、情緒あふれる風景が味わえます。

また、江戸時代中期から続く「湯の花」の製造地であり、その昔ながらの製造技術は国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

※「湯の花」とは、温泉ガスを凝縮させ、白く美しい温泉成分に結晶化させた天然の入浴剤のこと。

明礬でのワーケーションは、「Healthcare Workation Stay」をテーマにプログラムが組まれており、早朝のヨガやトレッキングといったメインコンテンツは2日から始まります。

続いて、ビッグローブ社長室長の芳賀さんからのお話です。

芳賀さんは別府ワーケーション実証実験の責任者であり、今回の明礬を含む全てのワーケーションに同行しています。

ビッグローブはONSEN WORKを通して企業に温泉地でのワーケーションを啓発しています。企業にとって投資対効果・メリットがあるワーケーションとは何かを研究しています。

参加者には”ワーケーションが本当に良いものなのか、自分自身で体感してみる”という観点を持ちながら、滞在を楽しんで過ごしてほしいと話していました。

最後に「日本健康開発財団」の後藤康彰さんから、健康チェックに関する説明がありました。

ワーケーションがもたらす身体的な影響を数値化するため、全ての実証実験で健康状態の計測を行なっています。

血圧などの測定を行いながら、後藤さんから配布されたアンケート用紙に記入していく参加者。

歩幅や前屈の測定のほか、アミラーゼ活性や自律神経、末梢神経循環なども計測。

ワーケーションの初日と最終日にヘルスチェックすることで、心身の変化を具体的に把握していきます。

明礬の景色を眺めながらのテレワーク

オリエンテーションが終わり、自室へと向かう参加者たち。仕事の合間に自然が広がる外へと目をやれば、ちょっとしたリフレッシュにもなります。

【1日目の感想】綿貫さん

ビッグローブ綿貫さん:
初めて訪れる別府に、すごくワクワクしています。特に、温泉を楽しみにして来ました(笑)。
明日から本格的にワーケーションが始まりますが、仕事が溜まっているので適度に作業をやりつつ、別府の温泉やアクティビティを存分に楽しみたいと思います!

【2日目】筋肉痛必至?ヨガと登山で身体を動かし秘湯を堪能

体をゆっくりと目覚めさせる「明礬YOGA」DAY1

2日目からは毎朝ヨガを行います。

講師を務めるのは、ヨガインストラクターとして別府市で活躍されている「尾渡智佳さん」。

まずは参加者たちの体の調子についてヒアリング。肩こりや腰痛といった悩みを抱えている方が多くいました。

「寝起きは身体が硬い状態なので、筋肉を伸ばすときはゆっくりと息を吐くことがポイントです」と話す尾渡さん。

足の指を1本1本ほぐすことから始まり、徐々に全身の骨や筋肉を意識しながらストレッチをしていきます。

初めてヨガを行う人もいましたが、ヨガを終えるとすっきりとした表情をしていました。

扇山トレッキングのご褒美で自然あふれる秘湯を味わう

ホテルで朝食をいただいたあとは、男性陣で扇山トレッキングへと向かいます。

山頂から扇状に広がっているように見える姿から、「扇山」とも呼ばれる大平山。標高810mの扇山は頂上へと登るルートが複数あり、登山初心者でも気軽に登れます。

ちなみに、毎年春に開催される「別府八湯温泉まつり」の際に、扇山で野焼きが行われます。温泉の神様に感謝を伝える「扇山火まつり」は、地域の人々にとって春の風物詩ともいえるイベントの一つです。

今回、参加者たちが挑戦したのは、裏から登る初心者向けのルート。陽の当たる表側とは異なり、裏からの道は辺り一面に雪が積もっています。

気を抜くと転びそうになるほど、ゴツゴツとした地面。参加者の中には、道端に落ちている木を杖代わりにして登る人もいました。

雑談を交わしたり、途中で休憩を挟んだりしながら進むこと40分。ようやく頂上に到着しました。

眼下に広がる別府の街並みや遠方に続く別府湾など、懸命に登ったからこそ見える景色は格別です。

扇山の頂上で記念撮影。ハードな道のりでしたが、みなさん達成感のある表情をしています。

下山途中、別府三大秘湯に数えられる「へびん湯」があるため、立ち寄り入浴。

へびん湯は湯船が棚田のようになっており、上にいくほど温度が高くなっているのが特徴的です。

自然の景観に包まれながら山登りの疲れを癒せるのは、別府ならではの楽しみ方でしょう。

気ままに過ごす自由時間・テレワーク

男性陣がトレッキングから戻った頃、女性陣はタクシーに乗って「鉄輪むし湯」へと向かっていました。

山登りを楽しんだり蒸し湯や温泉を楽しんだりと、それぞれに自分のやりたいことができるのは、ワーケーションの魅力と言えます。

別府ならではのランチをいただく

お昼時になり、明礬に建つ「岡本屋売店」から、可愛らしい見た目のランチボックスが届きました。

高温の蒸気で蒸された「地獄蒸し料理」のほか、とり天や玉子サンドなどが入っています。

一品ずつ味わう参加者たち。デザートの地獄蒸しプリンまで美味しくいただきました。

【2日目の感想】齋藤さん

ビッグローブ齋藤さん:
普段は山登りをすることは滅多にないんですが、疲れを残さないように自分のペースで登りました。かなり傾斜の強い山道でしたが、扇山の頂上に到達した時の達成感は大きかったです。
また、トレッキング後の秘湯「へびん湯」は開放感もあり、すごく気持ちよかったです。筋肉痛にならなかったのも、温泉の力かもしれませんね(笑)。

【3日目】明礬の文化を学び最新技術によるワークアウトを実施

一日の始まりを気持ちよくする「明礬YOGA」DAY2

3日目もヨガを行い、朝から気持ち良いスタートを切ります。前日も行なっていたためか、参加者たちは少し慣れた様子で身体をほぐしていました。

明礬の奥地で「湯の花」を学ぶ

(引用元:株式会社みょうばん 湯の里 公式HP)

続いて、ホテルからさらに山側にある「みょうばん湯の里」へと移動しました。

ここでは、江戸時代中期から300年近い歴史を持つ「薬用 湯の花」の製造が今なお続いており、昔ながらの文化が息づいています。

まずは、みょうばん湯の里の代表取締役・飯倉里美さんから、湯の花について説明がありました。

湯の花が作られている小屋の中を見学する参加者たち。

入り口付近の白い地面を触ってみると、ほんのり柔らかく、サラサラとした肌触りが手に伝わります。

小屋の中には原石や青粘土が敷き詰められており、地面から噴き出す温泉ガスがそれらを通過することで湯の花が作られていきます。

古来、明礬で作られてきた湯の花。医薬部外品である「薬用 湯の花」の一番の特徴は、無機塩類が皮膚のたんぱく質と結合して膜を作り、身体の熱の放散を防ぐため、入浴後の保温効果が高く湯冷めをしないこと。さらに、皮膚や汗腺などの脂肪や汚れを乳化する洗浄効果があるとのことです。

現在は入浴剤をはじめ、石鹸やハンドクリームなどのコスメなど、さまざまな商品に湯の花を活用しています。

また、泉質の違う2つの温泉に入る機能温泉浴の説明もありました。

みょうばん湯の里の強酸性の湯で皮脂の汚れを落とし(シャンプー効果)、鉄輪温泉のメタケイ酸を含む弱酸性の湯に浸かる(リンス効果)ことで美肌効果も期待できるとか。

飯倉さんのお話の後、みょうばん湯の里で販売されている「湯けむりサイダー」や「地獄蒸したまご」「温泉蒸しプリン」をいただきました。

温泉を活用した食べ物や飲み物をゆっくりと味わう参加者たち。

湯の花をはじめ、温泉という別府ならではの特徴を活かした商品に出会うことで、ビジネスアイデアのヒントになるかもしれません。

続いて、敷地内にある温泉へと向かいました。

仲良く内湯を楽しむ男性一同。雑談を楽しみながら同僚と浸かる温泉は、至福のひと時です。

みょうばん湯の里にある温泉は、露天風呂から望む景色の素晴らしさが魅力的で、自然を感じながら身体の芯まで温まっていきます。

参加者の中には「今まで入った温泉のなかで、ここが一番気持ち良かったです」と絶賛する人もいました。

いつものメンバーでも“いつもと違う”仕事の時間

ホテルへと戻った参加者たちは、同じ部屋に集まってテレワークを行なっていました。

自室に籠ったり同じ空間に集まったりして仕事ができるのも、ワーケーションだからこその過ごし方です。

最新技術を体感!装着型サイボーグHAL® × ワークアウト

本日最後のプログラムは、世界初の装着型サイボーグ「HAL®」を使ったエクササイズ。

使い方や注意点などの説明を聞いた後、実際に装着していきます。

HAL®は装着者の生体電位信号を感知して作動するため、まずは腰回りに電極を貼ります。

トレーニング指導者の加藤聡さんが言うには、装着型サイボーグを使ったワークアウトは、身体機能の改善や補助、拡張、再生などが期待できるのだとか。

装着すると、屈伸や前屈などの動きを装置が読み取り、バネが効くような感覚があります。

また、HAL®を使ったワークアウトだけでなく、“自重トレーニング”や“ストレッチポールを使ったエクササイズ”も行いました。

「仕事終わりや休憩の時に少しやるだけで、身体が楽になりますよ」と話す加藤さん。

ストレッチポールの効果はかなり実感できたようで、「帰ったら自宅用に買っておきます」という人もいました。

【3日目の感想】木村さん

ビッグローブ木村さん:
2日目のトレッキングもあったためか、今日のワークアウトでは久しぶりに足をつりました(笑)。また、装着型サイボーグという最新の技術に触れられたのは、良い刺激になったと思います。
エクササイズやストレッチは自宅でもできる内容だったので、自宅でもやってみます。

【4日目】気持ちよく迎えられた最終日

身体の変化に気づけた「明礬YOGA」DAY3

最後のプログラムは、ヨガで締めくくり。

2日目、3日目に行ったアクティビティで筋肉痛の方もいたため、最終日はこれまで以上にゆっくりとほぐしていきます。

窓から差し込む朝日を感じながら、静かに身体を動かしていく参加者たち。

「朝に行うヨガは、気持ちいいですね。毎日やりたいくらいです」と大満足の方もいました。

ヘルスチェックを通じて初日よりも改善が見られる

ワーケーションに参加することで、心身にどのような変化があったのかを可視化するため、初日に行ったヘルスチェックを最終日にも実施。

毎朝のヨガやトレッキングといったアクティビティだけでなく、明礬の温泉に浸かった4日間。

身体の柔軟性やストレスの状態など、参加者それぞれに変化があったようです。

最後のクロージングでは、ビッグローブ社長室長の芳賀さんより今後の展望についてお話がありました。

ビッグローブ芳賀さん:
ワーケーションは新しい働き方であり、実際に体験していただくことで、その良さがとても理解できると思います。

皆さんが「これは他の方にも体験してもらいたいな」と感じたのは、これからワーケーションが普及をしていく中でとても重要な感覚です。

企業と温泉地をワーケーションでつなぐONSEN WORKを手掛ける私たちにとって重要なことは、こういった十分な検証を行ったうえで、地域のみなさま、お宿のみなさまと一緒に企業にメリットのあるワーケーションを作り、実際に企業に体験いただく機会を増やしていくことだと考えます。

これからもワーケーションの普及にむけてチャレンジを続けていきますので、社員のみなさまもご協力いただければと思います。

【全体を通しての感想】

明礬で実施された4日間のワーケーション。最後に参加者の感想をご紹介します。

  • 「ヨガなど、朝から活動することで1日中スッキリとした気持ちで過ごせました」
  • 「今回は明礬での滞在でしたが、別府にはたくさんの温泉やあるので、もっといろいろと巡ってみたかったです」
  • 「ワーケーションはON・OFFの切り替えが難しいと思っていましたが、そんなことはなく、十分に仕事ができたのは驚きでした」

今だからこそ体感してもらいたいワーケーション

新しい働き方の一つとして注目を集めているワーケーションですが、明確な形は決まっていないのが実情です。

「福利厚生型別府ワーケーション」の第3弾として実施された明礬でのプログラムは、ヘルスケアアクティビティや秘湯、湯の花見学といったコンテンツが中心でした。しかし、今回のワーケーションを通じて、普段よりもコミュニケーションがとれたことに好印象を抱く参加者も多くいました。

温泉に浸かることで身体のコリだけでなく、非日常の同じ空間にいることで心のコリがほぐれたようです。

ぜひ皆さんもワーケーションをしてみませんか?温泉に癒されたり新たな発見があったりと、これからの人生にプラスとなる出会いが待っています。

別府市明礬でのワーケーションに興味をお持ちの方や、ワーケーションを検討している企業様は、こちらからお問い合わせください。

問合せ先 (一社)別府市産業連携・協働プラットフォーム B-biz LINK
TEL:0977-76-5205
Mail:info@b-bizlink.or.jp
HP:https://www.b-bizlink.or.jp/

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