9月24日、「別府ビジネスネットワーキングイベント」と題し、トークセッションと交流会が開催されました。
このイベントは日向市が観光庁「地域におけるデジタルノマドの誘客に向けたモデル実証事業」に採択され、その事業の一環で実施されました。多種多様な価値観を共有し、ローカルとグローバル双方の魅力や可能性の発見、別府と世界をつなぐ新たなネットワークの構築を目指したものです。ローカル+グローバルで“グローカルになる”をキャッチコピーに、別府を拠点に活躍する3社の企業の方々と海外で活躍するデジタルノマドワーカーの方々4名にお話しいただきました。
▲司会進行役は別府市 産業連携・協働プラットフォーム B-biz LINKの溝邉さん
別府の魅力が詰まった地獄温泉ミュージアムで開催
会場となったのは2022年12月にグランドオープンした地獄温泉ミュージアム。広々とした空間には大分県内各地から集められた、こだわりのお土産やギフトも並んでいます。
▲地獄温泉ミュージアム館内の「50CAFÉ(フィフティカフェ)」で開催された
トークセッションは館内の「50CAFÉ(フィフティカフェ)」を貸し切って行われました。こだわりのオーガニックコーヒーや温泉水と塩のみで作られた無添加ソーセージの特製ホットドッグをいただきながら、和気あいあいとした雰囲気の中での開催です。
▲自家製無添加ソーセージのホットドッグは参加者から大好評。ソーセージやパンを買いたいという要望も
セッション1:別府-世界をつなぐ企業とキーパーソン
セッション1となる前半部分では、「なぜ世界の中で別府を選んだのか~世界の窓口となっている別府の可能性~」と題し、別府を拠点として活躍している3社から別府を選んだ理由や事業内容、今後の展望などについて伺いました。
温泉や湯治の魅力を世界へ:湯治ぐらし株式会社
▲湯治ぐらし株式会社 統括ディレクター 太田 ふたばさん
はじめに湯治ぐらし株式会社 統括ディレクターの 太田 ふたばさんが登場。自身の経歴や別府を移住先に選んだ理由、湯治ぐらし株式会社での仕事内容や今後の事業展開について、詳しくお話してくださいました。
湯治ぐらし株式会社は、代表取締役の菅野さんが心身を整える「湯治」を現代のヘルスマネジメント・ライフスタイルとして世界に広めたいと設立。菅野さんは大阪府出身で、東京・大阪・上海で精力的に仕事をするかたわら、週末に地方の温泉地に通ううちに湯治に魅了されました。菅野さんは数多くの温泉地の中でも、とりわけ別府鉄輪温泉に惚れ込み、2019年に別府に移住されました。
現在では3棟の湯治シェアハウス「湯治ぐらし」、湯治ワーケーション、温泉入浴前後にバイタルチェックを行う「湯治チェックアップ」等を手掛けており、さらには「湯治」と異なる分野との掛け算を行うことで産まれる温泉産業開発にも注力しています。
▲湯治ぐらし株式会社が「七日一巡り」で提供する予定のプログラム
太田さんも菅野さんと志を同じくして「もっと温泉と関わりたい、温泉がある生活の魅力をもっと多くの人に伝えたい!」と入社されました。アメリカや中国での海外駐在を経験された太田さんですが、温泉が身近にあり生活の一部になっている、他にはない別府の文化に魅せられて移住を決意したそうです。
「世界的に温泉湧出量ではアメリカのイエローストーン国立公園が1位なのに対し、“入れる温泉″としては別府が1位なんです。温泉との関わりを深め、温泉の魅力をもっと広めていきたいです」と話されていたのが印象的でした。
湯治ぐらし株式会社では現在、湯治リトリートプログラム型滞在「七日一巡り」のための施設を準備中。観光としての短期の滞在ではなく、自分のこころと身体に寄り添いながら養生できるプログラムを目指しています。
ITを活用し、別府をよりワクワクする街に:株式会社IDM
▲株式会社IDM の代表 樹下 有斗さん
続いてお話してくださったのは、株式会社IDMの代表 樹下 有斗さん。 樹下さんは2015年、APU(立命館アジア太平洋大学) 国際経営学部を卒業後、東京都内の人材紹介会社に入社したものの、起業したいという思いがあり、2017年に別府にIターン。同じ大学出身の友人2名と株式会社 IDMを設立し、代表取締役社長に就任しました。
株式会社IDMではマーケティング、プロモーションリサーチなどを通してウェブ制作・動画制作・記事制作などを行うとともに、ドローンを活用したプログラミング教育などを実施しています。
樹下さんは「(出身地の京都ではなく)地理的には一見不利にも見える別府でもITやネットワークを活用して新しいことに挑戦し、よりワクワクするような街に盛り上げていきたい」と今後の意気込みを語りました。
外国人が日本で暮らす不便さを解消したい:Mochiron株式会社
▲Mochiron株式会社の創設者兼CEOであるウィジェシング・アラクチ・アラビンダさん
3人目の登壇者はMochiron Co. Ltd.の創設者兼CEOであるウィジェシング・アラクチ・アラビンダさんです。
アラビンダさんは2019年にAPU(立命館アジア太平洋大学)を卒業しました。大学生活中に別府の良さを感じ、別府は第2の故郷だと語るアラビンダさんは卒業後も別府に留まることを決意。一方で、自身が感じた外国人が別府で暮らすうえでの不便さを解消するべく、日常生活に必要な25の情報を集約した外国人向けアプリ“My BEPPU”を開発しました。
▲日常生活に必要な25の情報を集約した外国人向けアプリ“My BEPPU”
My BEPPUアプリでは、買い物や美容室、病院、保険などの情報やアルバイトの求人情報、行政関連の情報や学生向けの情報などが7か国語で網羅されており、社会人や学生などビザの種類による登録方法をとっていることで、より最適な情報を届けられる仕組みです。
アラビンダさんは将来的に別府に住む外国人は2倍に増えると見通し、「文化の違いゆえに外国人から起こる問題を解決したい」と言います。外国人が住みやすい日本となるよう、文化の壁が少なくなるためのプラットフォームを整え、日本の企業が外国人にアプローチするための橋渡し的な役割を目指しています。
▲Mochiron株式会社から近日公開予定の日本全国向けアプリ“MOCHIRON”
そのための第一歩として、My BEPPUアプリの日本全国向けバージョンともいえるアプリ“MOCHIRON”が近日公開予定です。MOCHIRONアプリではユーザーからの情報提供も可能になり、より広範囲での情報の網羅が期待されています。
セッション2:デジタルノマドの方々のライフスタイルについて
セッション2では、デジタルノマドスタイルでお仕事をされている方々からノマド生活を始めたきっかけや現在のお仕事、ライフスタイルなどについてのお話を伺いました。
今回いらっしゃったノマドワークスタイルの方々は、ワーケーションプログラムで宮崎県日向市に滞在中。そのうちの2泊3日で別府にお越しいただき、温泉や観光を楽しみ、このトークセッションにも参加していただきました。
ノマドでも1人ではない働き方が魅力:アレックスさん
▲ドイツ出身、バリ在住のアレックスさん
最初のスピーカーはAlexandra Melchers (アレックス)さん。アレックスさんは、ドイツ出身で3年前にデジタルノマド生活をスタートしました。始めはスリランカに滞在し、その後オーストラリアでの生活を経て、現在はインドネシアのバリ島で暮らしています。
仕事はソーシャルメディアマネジメントやコピーライティング、バーチャルアシスタントなど、フリーランスで活動中。自分で自由にスケジュールを立てられるノマド生活の自由さが気に入っています。サーフィンが趣味のアレックスさんにとって、海や滝など自然と近いのに仕事がどこでもできるWi-Fi環境やインターネット通信環境が良いバリ島は理想的な環境なのだそう。
仕事前に毎朝サーフィンをして、サーフィンで出会った2人の友人とともにカフェなどで仕事をするのが普段のスタイルです。バリではコミュニティが確立していて、カフェでも1人ではなくいつも誰かと一緒に仕事ができる、良い環境だと言います。
現地時間で仕事ができるスタイルであちこちの国へ:ジェシカさん
▲インドネシア・ジャカルタ出身、現在はバリで暮らすジェシカさん
続いてお話してくださったのはアレックスさんの友人でもあり、今回も一緒に日本を訪れている(Jessica)ジェシカさんです。ジェシカさんはインドネシアのジャカルタ出身で、2020年にノマド生活をスタートしました。
休暇で訪れたバリ島で人の親切さや現地の暮らしやすさが気に入ったジェシカさんは、バリに拠点を置きつつ、あちこちの国に探検に出かけるライフスタイルを送っています。インターネットとPC、おいしいコーヒーさえあればどこでも仕事ができるといい、これまでにベトナム、シンガポール、マレーシア、タイなど、滞在期間は決めず片道切符で訪れて現地での生活を楽しんでいるそう。
仕事はプロダクトデザイナーとしてUI/UXデザインを手がけており、スイスに本社がある会社に完全リモートワークのスタイルで勤めています。会社はフレキシブルタイム制を採用しているため、ジェシカさんがどこの国にいたとしても現地のタイムゾーンに合わせて1日7~8時間、好きな時間に働くことができています。
街を離れて海へ、ノマド生活がスタート:ケイシーさん
▲台湾出身、バリ在住のカイロウ・チェンさん
3人目は台湾出身でバリ在住のKairou Chen(カイロウ・チェン)さん。名前のイニシャルからKC(ケーシー)と呼ばれていて、友人であるアレックスさん、ジェシカさんと一緒に日本を訪れました。仕事はEコマース、プロダクトサクセスなどを担当しています。
ケーシーさんは台湾の旅行雑誌「トラベラーリュクスマガジン」がきっかけで旅が好きになり、マレーシアやミャンマー、チュニジアなどあちこちの国を旅してきました。しかし、コロナ禍で台湾がロックダウンされたことがきっかけでリモートワークをするようになり、旅の舞台は台湾国内の高雄やバリへと移ります。
あるとき、サーフィンの好きな友人のつてでコロナビールのオンラインCMに起用されたことがきっかけでケーシーさんもサーフィンをはじめ、街を離れて海に出かけるようになり、遊牧民のようなノマド生活がスタートしました。
「バリは交通の便が良く、山も海も近くて、サーフィンも楽しめ、食事や生活費などが財布に優しい価格なのも魅力で気に入っています」とケーシーさん。
世界で一番好きな場所は日本!:ステファノスさん
▲ギリシャ出身、福岡在住のアンティパス・ステファノスさん
最後にギリシャ出身のStefanos Antypas(アンティパス・ステファノス)さんが登場。「日本語、少ししか話せません」と流ちょうな日本語で会場の笑いを誘ったステファノスさんは、5年間ノマド生活中。
ロンドンに2年、ドバイに8か月、バリに10か月、ブルガリアに6か月…と滞在し、現在は福岡でノマドワークを続けながら暮らしています。
仕事は、ビデオ制作講師、SNSコンサル、プレゼンター、ネットワーキングイベントの開催など多岐にわたります。来日してから世界で一番好きな場所が日本になったそうで、日本で撮った自身の写真を紹介しながら「この時履いていたズボンが破れてしまったので…今日のはワークマンで買ったズボンです!」としっかり日本になじんでいる様子でした。
今後のさらなる活躍に期待!
▲最後に記念撮影。別府らしく“温泉ポーズ”でキメていただきました
時間の関係で駆け足となったイベントでしたが、登壇者や参加者、デジタルノマドの方々はバスに乗るまでの最後の10分も惜しむように交流されていました。
今回登壇してくださった3企業の今後の展開と、デジタルノマド4名の方々のさらなる活躍に期待がふくらみます。
執筆者|荒川 晴奈氏
千葉県出身、東京、大阪生活を経て4年前に大分に移住したフリーライター。
大分の温泉・食・人にどっぷりはまりつつ、山々に囲まれた田舎で自身もノマド生活に近いライフスタイルを謳歌中。ややWebデザイナーでもあり、ときどき料理人という微妙なスキルを駆使しながら楽しく暮らしています。