別府の温泉資源を生かす!「別府ONSENアカデミア2022」

3年ぶりの開催となった今年の別府ONSENアカデミアは、別府と温泉の今後の在り方について、さまざまな視点から深く考える濃密な場となりました。

第1部では、「温泉文化の持続可能性」についてパネルディスカッションを実施。共同温泉の担い手が不足している昨今、別府の温泉文化を守るためにはどのような取組が必要なのか、地元の方と若い世代が深く話し合いました。

第2部は、「温泉地でのワーケーション」をテーマにした、株式会社バスクリンつくば研究所フェロー博士(薬学)バスライフ推進の石澤太市さんによる研究発表がありました。

続く第3部は、「温泉」「腸活」をテーマにしたトークセッションです。俳優・映画監督の斎藤工さんをはじめ、株式会社bactericoの菅沼名津季さんや、映画ライターの森田真帆さん、長野別府市長が登壇。

立場や背景の異なる人たちが集まり、互いの意見を交わすひと時となりました。

さらに、第4部のシンポジウムでは、別府市が九州大学都市研究センター、別府市旅館ホテル組合連合会と包括連携協定を結び行なった温泉の効果を科学的に調査した研究発表、別府市の今後の展望について議論されました。

具体的にどのような内容だったのか、詳しく見ていきましょう。

別府市長挨拶

別府市が進める新湯治・ウェルネスツーリズム事業や別府と温泉の展望について語る長野市長

別府市は、温泉の泉質ごとの効果に関する実証実験を行いました。これは、2021年4月に別府市と九州大学都市研究センター、別府市ホテル旅館組合連合会が包括連携協定を結び行なったもので、県内外からも注目を集めている事業です。

長野市長は「温泉が泉質ごとにどういう病気に効くのかということを、腸内細菌に着目して実証実験をしています。新湯治・ウェルネスツーリズムを世界中の皆様に発信し、『心身の健康、ウェルネスといえば別府』と言われるよう、温泉都市として世界中の温泉の可能性を拡げていきたいです。」と開催の挨拶を述べました。

「温泉文化を持続可能にするために」(パネルディスカッション)

パネリストとして登壇したのは、別府大学学生の重光宏哉さん、立命館アジア太平洋大学学生の山田笑莉さん、別府大学広報室課長の石川万実さん、ファシリテーターとして株式会社サンエスメンテナンスの塩見泰美さん。登壇者の4人は2022年6月から、別府の共同温泉の現状や今後の展望について情報交換してきた方達です。

重光さんは、現在市内8ヶ所の共同温泉の清掃を行っています。2年前に管理者の不在や利用者の減少によって閉鎖の危機にあった前田温泉の立て直しに携わり、前田温泉清掃チームのリーダーとして活動の輪を広げています。

山田さんは、温泉文化を残す取組や前田温泉での清掃を通して、「文化は自然に残っていると思いがちだったが、守りたいと思っている方々の努力があるから残っているのだと学んだ」と言います。

石川さんは大学で仕事をしている中で、温泉への関心が薄くその価値に気づいていない学生たちが多いことに気づき、温泉と学生を繋ぐ広報活動をしています。石川さんは、「重光くんのように地域の温泉を守る活動が出てきたことが嬉しい。学生の力を街の中でどうやって活かせるか、これからも考えていきたい」と熱心に語っていました。

発表後のインタビュー

「共同温泉ごとのイメージキャラクターを作ることを考えている」と温泉文化を持続可能なものにしていくため、今後の戦略を熱心に語ってくれた重光さん。

「APUの国際学生が共同温泉に入りやすい状況を作っていき、その橋渡しになれるよう頑張ります」と話してくれた山田さん。

「学生達のおかげで、いろいろな方に前田温泉を知ってもらう機会が増えました。今年6月のディスカッションからの学生達の取組が花開き始めたという感じがします。」と微笑む石川さん。

ファシリテーターを務め、自社で温泉の管理運営をしている塩見さん。
「『学生達が起こした活動のバトンをどう繋いでいくか』が次の段階で重要なので、しっかりと考えていきたいです」とおっしゃっていました。

温泉の街・別府の共同温泉が存続の危機に悩まされる中、温泉文化を繋いでいくために必死に取り組む地域住民と学生。温泉文化の持続可能性について、そのひとつの答えを見ることができたとても有意義なセッションでした。

「温泉地でのワーケーション」(研究発表)

続いて、株式会社バスクリンつくば研究所フェロー博士(薬学)の石澤太市さんが登壇し、温泉地でのワーケーションをテーマにした研究発表が行われました。

石澤さんの発表では、「ワーケーションの場所として別府は適している」との研究結果が出されました。その理由は、温泉地でのワーケーションは業務の効率化が期待できるから。特に、日常を離れる「転地効果」によってリラックス感が得られるほか、適度な入浴による体温の上昇が業務効率化の要因として考えられています。

また「朝の入浴は業務効率化につながるが、入浴時間は短めが適している」など、ワーケーションだけでなく別府市民にとっても有益な情報がありました。

実際にワーケーションの参加者の中では、「リラックスした状態で仕事に臨むことができ、スピードや実績が上がるように感じた」という声が上がったと言います。

「ワーケーションの場所として別府が高い可能性を秘めている」という認識を深めるセッションとなりました。

「旅と温泉と」(トークセッション)

俳優で映画監督の斎藤工さんが登場したトークセッションでは、株式会社bacterico代表取締役菅沼名津季さん、映画ライターの森田真帆さんと長野別府市長が「温泉」「腸活」について語りました。

「別府短編映画制作プロジェクト」をきっかけに、短編映画『縁石』の監督を務めた斎藤さん。撮影期間中、別府の湯治宿に宿泊する機会もあり、「入浴や蒸し料理で、体の外側と内側両方から健康になれる場所」と、別府と温泉の魅力を実感されたようです。

また、斎藤さんは普段の生活から腸を気にかけているとのこと。菅沼さんによると、「腸内細菌というのは全身の病気に関わっていて、常在する腸内細菌は3歳までにほとんどが決まります。人によってその種類や数が違うので、腸内細菌をその人に合わせた最適な状態にすることが重要です」と説明。

温泉と健康の相関について議論された、内容の濃いトークセッションとなりました。

「別府温泉で免疫力日本一宣言」(シンポジウム)

シンポジウムでは、別府市が、九州大学都市研究センター、別府市旅館ホテル組合連合会と実施した温泉の泉質ごとの効果に関する実証実験の研究発表が行われました。

また、別府市の今後の展望について、九州大学都市研究センターセンター長の馬奈木俊介さん、九州大学病院別府病院准教授の前田豊樹さん、別府市旅館ホテル組合連合会会長の西田陽一さんと長野市長の4人で意見を交わしました。

腸内細菌に着目した研究結果として、「どの病気に効くかは泉質ごとに違うが、疫病のリスクが減少する。別府温泉が有する免疫力を高める効果を科学的に証明できた」などの発表がありました。温泉が身体に良いということが、医学的にも数値的にも結果が出たようです。

「別府には全国にある泉質10種類の内7種類があります。今回のデータを強みに、治したい病気やその人に合った泉質を選び、その人によって入浴時間など入浴方法を変え、その人に合った温泉健康観光プランを提案する。健康のために別府を訪れる。そんな別府を目指していきたい」と締めくくる長野市長。

別府市は“地域の活性化だけでなく、訪れる人に健康になってもらいたい”という想いを持って、新湯治・ウェルネスツーリズム事業を進めているのだと伝わってくる内容でした。

斎藤工制作映画「縁石」の予告編本邦初公開

斎藤工さんがオール別府ロケで撮影された映画「縁石」の予告編が、別府ONSENアカデミア2022で本邦初上映されました。この映画は、「別府短編映画制作プロジェクト」の第3弾として制作されたもので、「別府に訪れる観光客でも観れるように」と30分程度の短編映画になっています。エキストラ含め出演者全員が地元大分県出身の方で、共同温泉を舞台に撮られた短編映画「縁石」。気になる方はチェックしてみてください。

別府短編映画:Beppu Short Movie Project

まとめ

今回の別府ONSENアカデミア2022では、温泉文化を引き継ぐ地域での取組をはじめ、温泉の効能に関する結果発表や、別府と温泉に造詣の深い方々のディスカッションが行われました。

全体を通して分かったのは、別府には古き良き魅力だけでなく、新たな可能性や高い将来性もあることです。

新湯治・ウェルネスツーリズムを推進する別府市の今後の動きに、ぜひ注目してみてください。

別府市観光情報サイト「別府たび」内
「別府ONSENアカデミア2022」特集記事はこちら

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